12,12月20日 日曜日 10時10分 北陸タクシー株式会社駐車場

12.mp3 「ふわぁ~。」 大きなあくびをしている間は、無の境地を味わうことができる。 北陸タクシーのドライバーである小西規之は今しがた車庫に帰ってきたところだった。この仕事に関しては二十年のベテランであるが、やはり普通と違うバイオリズムでの仕事は、五十八を過ぎたこの体に鉛のように重い疲労感を与えてくれていた。 小西は車からゆっくりと降り、自分の腰をさすりながら事務所の方に向かった。今日のアガリを事務所に入金し、タイムカードを押して一分でも早く帰宅したい気持ちだった。そんな小西を背後から呼ぶ声が聞こえた。 「ノリさーん!」 振り返ると恰幅のいい男がこちらに向かって手を振っている。身長は百七十センチぐらい。体重は見た感じで百キロ相当ありそうだ。彼のベルトはいつものように腹に隠れて見えない。冬の北陸は上着なしではかなり寒い季節であるが、彼は長袖のシャツを腕まくりして着ていた。小西の後輩の南部達夫だった。彼は巨体を揺らしながら小西の側にやってきた。 「なんや?」 「いやぁ最近さっぱりでさぁ…。ノリさんはどう?」 近くに寄って初めて分かることもある。この寒い季節に南部は額に汗をかいていた。 「どうって…。全然だめやわいや。不景気や。」 そういうと小西は腰をさすりながら、再び事務所の方にむかってゆっくりと歩き始めた。南部も彼と肩を並べて歩いた。 「ほんとに最近は長距離ってないよね。」 「そうやなぁ…。少なくなったなぁ。」 「これって、やっぱり…

続きを読む