31,12月20日 日曜日 17時16分 民政党石川県支部

31.mp3 村上は民政党石川県支部の三階にあるホールの外にいた。受付に置かれたパイプ椅子に腰をかけて彼は携帯電話を触っていた。 ホールの中では本多善幸が支援者に対して、国土建設大臣就任の挨拶を先ほどから述べている。 「村上君。」 パリっとした身なりの小柄な男は村上の前に立って声をかけた。 「あっ専務。」 村上は慌てて携帯電話をしまい、彼の前に直立不動に立った。声をかけてきたのは本多善幸の実弟、本多慶喜だった。 「ああ、いい、いい。君も疲れているだろ。座ってなさい。」 そう言うと男は村上の隣に座った。 「恐れ入ります。」 「とうとうここまで来たな。」 「はい。」 「やはり今日は多いな。」 「はい。先生に対する期待の現れです。」 慶喜はふっと笑みを浮かべた。 「いや、地元選挙区で兄貴の代わりに飛び回ってくれた君を始めとする、優秀なスタッフがいたからこそだと俺は思う。」 「ありがとうございます。」 「あのな、小松空港で兄貴と話をしていたんだ。そろそろ我が党も新しい候補者を出さんといかんってな。」 村上は本多慶喜の言葉を聞いて身構えた。 「君も知っているだろう。石川3区の件だ。」 石川3区は奥能登の珠洲市から金沢市北部に隣接する津幡町や内灘町までの能登地区を中心としたエリアである。 小選挙区制が導入されてから、与党民政党は勝ち続けた。特にこの石川3区においては負けなしの実績を誇っている。 しかし、近年の不況を…

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