32,12月20日 日曜日 17時03分 金沢駅付近

32.mp3 混み始めた幹線道路に一台のトラックが走行している。 ウィンカーを出すタイミングとハンドルをきるタイミングが極端に短く、大きな車体を乱暴に操りながら車の間を縫うようにそれは走っていた。 傍目から見ればかなり乱暴な運転である。 「あの…」 助手席にいた美紀が不安そうに口を開いた。が、運転席の赤松は無言である。 「危ないと思います…。」 美紀がそういうのも無理もない。 赤松がハンドルをきる度に車体が傾き、遠心力で彼女の華奢な体がシートの座面を滑るほどである。 赤松は彼女の言葉に反応を示すこと無く、ただひたすら前を向いて無言で運転している。焦っている様子はない。無表情に近かった。 普段は美紀に気さくに話しかけ、丁寧な運転をする彼であるだけに彼女は不安になった。ヒヤッとするたびに両足に精一杯の力が入ってしまう。 「…社長。わたし、何か失敗しましたか。」 信号待ちとなり、ふと助手席に座っている美紀の顔を見ると、目に涙を浮かべ今にも泣き出しそうだった。それを見て赤松は我に帰った。 ーしまった…。桐本さんの娘さんのことがあったってのに、俺といったら…。 「すまん…。」 信号が青になった。発信するときの彼のクラッチの繋ぎはいつものようにスムーズなものになっていた。 「君には一切関係の無いことや。俺が悪かった。謝る。」 赤松の頭は母の文子から聞かされた、父親の死の真相でいっぱいだった。 いや、真相かどうかは分からない。母…

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