39,12月20日 日曜日 19時48分 佐竹宅
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帰宅した佐竹の心中は穏やかではなかった。
ーなんで赤松の母さんは、俺に一色のことなんて聞いたんだ。俺は一色とは何の関係もない。赤の他人だ。俺は何も知らない。何も関係がない。あいつが悪いんだ。あいつが全部悪い。
佐竹は冷蔵庫を開け、そこに入っていた缶ビールを一気に飲んだ。
ーまさか…俺…疑われているのか…。
ふと動きを止めて部屋に飾ってある高校時代の写真に目をやった。写真の先にある赤松の表情は笑顔だ。
ーいや、そんなはずはない。
再度、佐竹はビールに口をつけた。
赤松文子から唐突に自分と一色の関係を尋ねられたことに、混乱と一種の憤りのようなものを佐竹は抱いていた。
ー一色くん…。くん?…赤松の母さん、一色のこと君付けで呼んでたよな。なんで自分のところのバイトを殺した一色のことをそんな呼び方するんだ?
飲み干した缶ビールを握りつぶした。
ー考えすぎだ…。
佐竹は自分の精神状態が穏やかでないことは知っていた。
高校時代の同級生が連続殺人事件の容疑者として世間を騒がせている。その容疑者は縁もゆかりもない存在ではない。高校時代はむしろ密接に彼と関わってきた。
そうであるがために、一色の存在は自分の心に影を落としている。気を紛らわせるためにも村上と連絡を取り、そして赤松とも直接会った。
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