47,12月21日 月曜日 9時56分 喫茶BON
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金沢駅構内のテナントスペースの一角にあるBONに、佐竹が銀行員特有の大きなカバンをもって入ってきた。
「あら、佐竹さんじゃない。」
マスターの森は中年の男性であるが、女性のような口調で佐竹を意外そうに見ながら、声をかけた。佐竹は森の言葉には耳を貸さず、店内をひと通り見渡していた。
入り口から見て死角となるところに陣取っていた古田は、入店してきた佐竹に手を上げて合図した。それに気づいた佐竹はようやく森の言葉に反応した。
「ああ、マスター。ちょっと約束があったんだ。」
「あらそう。」
「このことは誰にも内緒でお願い。」
「いいわぁ。で、コーヒーでいいのかしら。」
「あぁそれで。」
佐竹は店の奥にあるテーブル席でメモ帳を開いて座っている古田と正体した。
「おまたせしました。」
「こちらこそ、突然すいませんでした。」
古田は佐竹に頭を下げた。
テーブルに配された灰皿に三本の吸殻を見て古田が喫煙者であることを確認した。
「私も吸っていいですか。」
「おう、佐竹さんも吸われますか。」
「ええ。」
「これは嬉しいですな。ガンガン吸ってください。とかくこの世は喫煙者には肩身が狭いですからね。」
古田は苦笑いを浮かべた。
「いつかは警察の方が来られるだろうと思っていましたが、こんなに早く来られるとは。」
佐竹は勢い良く吸い込んだ煙を吐き出した。
「ほう、どうして我々が来ると思われたのですか。」
「私と一色は何…