56,12月21日 月曜日 11時53分 県警本部交通安全部資料室
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「松永…。」
片倉の前方10m先にはコート姿の松永が立っていた。
「お前、そこで何をしている。」
そう言って松永はこちらに歩いてくる。
「おい、片倉。松永か。まつ…。」
電話の先で声を発する古田を遮るように、片倉はそれを切った。
「やれやれ。ちょっとは大人しくしていてくれればいいものなんだが…。」
松永は伸びきった自分の髪の毛を掻きあげた。
「ちょろちょろちょろちょろネズミが動きまわって目障りなんだよ。何を調べていた。」
「別になんでもいいだろ。あんたこそなんでこんな所におるんや。」
「何だ…その態度は。」
「こっちは今あんたとは何も関係がないんだ。指図は受けねぇ。」
片倉の態度に呆れた表情を示した松永だったが、昨日の狂人のように振る舞う素振りは見せなかった。松永は片倉が左手にスマートフォンを持っているのを見た。
「捜査資料の無断複製、外部持ち出しは懲戒もんだ。」
そう言って彼は片倉からそれを取り上げた。
「消せ。」
「…。」
「今すぐこの場で消せ。俺の目の前で確実に消せ!!」
「それはできん。」
「あのなぁ、この俺が最大の親切心で言ってやってんのに、それすらもお前は無視か?」
そういうと松永はコートのポケットの中からホッチキスで止められ、強引に4つに折りたたまれた10枚ほどの用紙を取り出した。
「お前が欲しいのはこれだろ。」
松永が手にしている資料は、いま片倉が撮影した6年…