60,12月21日 月曜日 13時22分 フラワーショップアサフス
60.mp3
店の奥にある畳敷きの文子の部屋で古田と片倉は彼女と向かい合っていた。
「当時のことは剛志さんからお聞きしました。」
「そうですか。」
「単刀直入にお聞きします。文子さん。あなたは500万の口止め料を貰いましたね。それは誰からのものですか。」
「剛志から聞いたでしょう。コンドウサトミという人です。」
「いえ、私がお聞きしたいのはあなたが口止め料を振り込むようにと依頼した人です。コンドウサトミさんではありません。」
文子は古田の言葉に黙ってしまった。
「忠志さんは口止め料の受け取りを拒んだ。しかしあなたは旦那さんに内緒で口止めを依頼する人間と接触した。だから500万が口座に入金されたんですよね。」
文子は問いかける片倉と目を合わさない。その様子を古田は片倉のそばで観察した。
「あなたが接触した人間は誰ですか。」
文子は黙ったままだ。
「文子さん。我々はあなたが口止め料を貰ったから、罪に問われるとか言ってる訳じゃないんです。ただ、当時の本当のことを知りたいだけなんです。」
この片倉の台詞にはっとした文子は、塞いでいた表情から一転して片倉の目を正面から見ることとなった。
「…あの人も同じことを言っていました。」
「あの人?あの人って誰ですか。」
「一色くん…です…。」
文子は瞳に涙を浮かべていた。片倉と古田はお互い顔を見て頷いた。そして片倉が続けて質問をする。
「文子さん。その一色と同じように我々にも教えていただけませんか。」
「刑事さん。」
そう…