2019年07月25日

24,12月20日 日曜日 14時05分 佐竹宅



アサフスで購入した花が入った箱を手にして自宅に帰ってきた佐竹は、それをダイニングテーブルの上に置いた。
花が入った箱を丁寧に開封すると子豚のかたちの鉢に三種類の花が奇麗に収まっていた。

佐竹は花に関する知識は持ち合わせていない。だから、それらの花がどういった種類のものなのか分からない。彼の部屋には植物の類いは一切なかった。あるのは雑誌書類、パソコン、テレビ、その他家電、家具といったもの。この実用性のみを追求した部屋に植物が加わるのは異色であった。

だがそう言った環境だからこそ、花の存在感は大きかった。

テーブルの端に置かれたノートパソコンを開き、「12月 花」で検索をかける。そして上位に表示されたサイトを見た。眼の前の花とサイトを見比べて佐竹は子豚の鉢に収められているのは黄水仙、雪ノ下、プリムラである事を知った。

ーへぇ。そんな名前なのか、これ。

佐竹は花の説明と合わせて書かれている花言葉に目をやった。

黄水仙(キズイセン) 愛にこたえて
雪ノ下 切実な愛情
プリムラ 永続的な愛情

全ての花言葉に愛という言葉が入っている。それに気がついた佐竹は少し熱くなった。
ふらっと訪れた一見客。花をくれと言ったら愛があふれる花を提供された。もしやあの山内という女性、こちらに気があるのか?などと自分にとって非常に都合のいい解釈をしたのである。

しかしよく考えてみれば、この時期に花をプレゼントする状況というものは限られてくる。店に飾ってあったのはまさしく、今の時期にふさわしい花の詰め合わせだったのだ。「展示してあるものと同じものが欲しい」と言えば、必然的にそのような意味をもあった花が提供される。
当たり前の事に気づいた佐竹だったが、内心少し残念な気持ちになった。

―なに浮き足立ってんだ、俺。

山内美紀とのきっかけを赤松から提供されただけで、気分がふわついている自分に気がついた。

―そうだ、一色はどうした。

無理やり話題を変えるように彼はニュースサイトを開いた。トップを飾るのは熨子山連続殺人事件だった。だがその記事は11時で更新は止まっており、新しい情報はもたらされていなかった。

―それにしても一色の奴、何で赤松のところに行ってたんだ。まさか、殺人の下見か…。いや待て…あいつは警官だ。警官なら俺の住所も知っているはずだ。…村上のも…。…と言う事はその気になればどうにでもできる…か。

冷静に考えてみると、一色に対して自分にできることは何もない。村上も同じであるはずだ。しかし村上は何かしらの行動を起こす旨を佐竹に伝えていた。個人の情報を抑えることができる立場である一色に対して、こちらには何の情報もない。丸腰で凶悪犯罪の犯人と接触を試みるというのであれば、無謀以外の何物でもない。

―しかし、俺は一色に殺される謂れが無い。

いろいろと考えを巡らせているところに一通のメールが佐竹の携帯に届いた。

「村上?」

佐竹は本文を読んだ。

さっきは熱くなってしまってすまん。

熨子山を通ってきた。検問していたよ。一色が拳銃を持って未だ逃走中だから気をつけてくれって警官に言われた。

俺も何の仕事をしているのか、今からどこに行くのかとか色々聞かれた。警官の様子を見る限り、あいつら一色の行方について、何の手がかりもなさそうだ。一体あいつはどこに逃げているんだろう。俺も少し怖くなってきた。

今日は本多がこっちに来るから夜遅くなる。また、明日の晩にでもお前んところに電話するよ。


佐竹は村上のメールを一読し「わかった」と返信した。

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posted by 闇と鮒 at 00:00| Comment(0) | ポッドキャスト | 更新情報をチェックする
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