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「部長と穴山と井上の接点というのは、こんなところや。」
「ふーん。…やるかやらないか…それが問題ってか…。」
「ああ。」
「んで、殺っちまったってか…。」
片倉は手にしていたノートを一旦畳んで、天を仰いだ。
「よしトシさん。要点を整理しよう。」
「ん?」
「一色は穴山と井上に何かしらの制裁を加えたかった。」
「うん。」
「そしてその制裁にはスピードが必要やった。」
「そうや。」
「仮に今回の事件がその制裁やったとせんけ。憎き豆泥棒(性犯罪者)は死んでめでたしめでたし。ほやけどスピードって点でどうや。」
「そうやなぁ、決して早いとは言えん。」
「穴山と井上を首尾よく殺したんはいい。だが、その後の桐本由香と間宮孝和はどうなる。こっちの方は一色と接点が見いだせん。」
ふたりとも黙ってしまった。
「片倉、ワシも初めは今のお前のように考えた。でも接点とかこだわっとると、なかなか自分の中のストーリーが展開していかんがや。」
そうならそうと先に言えと言わんばかりの憮然とした表情で、片倉は古田を見た。古田は片倉の顔を見て失笑し、話を続けた。
「すまん。まぁ聞いてくれや。さっき北高に行ってきたんや。」
古田は背広のポケットから幾重にか折りたたまれた何枚かのコピー用紙を取り出して、畳の上にそれを広げた。
「卒業アルバムの写や。全部で12枚ある。」
そのコピー用紙一枚毎に一名の卒業生の顔写真がコピーされていた。それぞれ写真の下に名前と生年月日、そして当時の住所が記載されている。当然その中には高校時代の一色の顔写真もあった。
「こいつらは何や。」
「一色の部活動の同期連中や。」
「部活の同期?それが何の関係があるって言うんや。」
「まぁそう結論を急ぐなや片倉。いいか捜査っちゅうもんは、ひょんなところから手がかりが生まれてくるもんや。そのためには一見無駄と思える現場も手当たり次第当たる必要がある。」
古田は12枚のコピー用紙の中から、一枚の紙を手にとって片倉の方に手渡した。
「おまえ、こいつに見覚えないか。」
渡されたモノクロの顔写真を見て、片倉はしばらく考えた。しかし思い当たる節はない。
「じゃあこの写真は。」
そう言って、古田はプリントされた別の写真を彼の前に差し出した。
その写真は、遠いところからズームを使って撮影されたのか、荒い画像であった。丸型のサングラスをかけた男が車の側に立っている。セダン型の高級車の横で誰かを待っている様だ。
「この丸サングラスの男と卒業写真をよーく見比べてみてくれ。」
一方の顔の大部分がサングラスによって隠されているため顔の特徴を見出しにくい。しかし少し釣り上がった口元。頬のコケ方。これらは類似するのではないか。片倉は自分の頭の中で、卒業写真の方の男にサングラスをかけさせた。
「あ…。」
「ん?」
「トシさん…こいつ…」
「思い出したか。」
片倉は唾を飲んだ。
「鍋島惇。」
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